モンテッソーリ教育とは?
モンテッソーリ教育で大切にされている基本的な理念とは
どのような考え方なのでしょうか。
目次
1.
マリア・モンテッソーリ(以下:モンテッソーリ)は、子どもは、将来大人
になるための人間を創っていて、その偉大な力を援助することこそが教育で
あるとし、
教育とは『生命への援助(Aid to life)』
であると定義しました。
子どもは、生まれた時から自分で自分を発達させる力があります。
大人がやってあげたり、教え込むのではなく、自立できる環境をつくって
あげることで自分らしくのびのびと、幸せに発達していくことができます。
2.
私たちは子どもを愛するが故に、先回りして子どもが失敗したり間違えるの
を防ぎ、訂正してしまいます。
しかし、子どもが自分でやりたいという意志で動くときや、自分で失敗に
気がついたときは成長のチャンスです。
小さな自立や自己選択は自信を生み、その自信が次の挑戦へと繋がって
いきます。
大人は、子どものチャンスを奪わないように、子どもを一人の
人間として尊重します。
そのために、子どもが基本的な日常生活の動きを自分でできるように、
環境を整えることがとても重要です。
『子どもが自分で活動し、自分で欲し、
自分で考えるのを援助しなければなりません。』
【引用:子どもの精神】
3.
子どもは決して、大人が満たしてやらなければ何も入っていないかのような
空っぽの存在ではありません。
モンテッソーリは『子どもは人間を建設している』と考えました。
誰でも皆、子どもの頃に築いた基礎を元に、大人になっていくからです。
生まれた時からこの『人間の建設』は、はじまります。
はじめは生命の衝動に従って、体を動かしたりハイハイをしたり、
二足歩行をしたりしますが、発達と共に徐々に意志が育っていきます。
では、『人間の建設』とは、
一体どのように行うのでしょうか?
4.
モンテッソーリは、世界中の0−6歳の子どもに共通するある特別な時期が
あることを発見しました。
幼い子どもは、家庭や身の回りで見たもの、聞いたものを
『何でも吸収する力』があります。これを『吸収精神』といいます。
0−3歳頃は、無意識的に、言語や行動、規則性など、日常的に見たもの
聞いたものを無選別に全て吸収します。
3−6歳では、これまで無意識に吸収してきたものを、意識的に使って
探索しながら、徐々に自分の一部にしていきます。
環境から吸収するため、その国や地域の文化や風習、
言語のイントネーションなども定着します。
『吸収精神』は6歳頃までに完全に消えていきます。
5.
また、ある一つの特性にとてもこだわり敏感になる時期があります。
これを『敏感期』と言います。
発達に必要なものを獲得するための力で、一生のうちでこれほどまでに
成長する時期は他にはない、とても重要な時期です。
敏感期の子どもの行動は、大人からすると奇妙で、理解できないことが
あります。
エネルギーがうまく発散できないと、『駄々』と言われる現象が
起こります。
しかし、子どもにとっては重要な『人間を建設する』ための仕事です。
自然から『発達しなさい』と命令されているかのように、子どもはとにかく
繰り返し、やり遂げようと努力します。
そして、その特性が発達すると敏感性は消え、6歳までに、あらゆる敏感期
は完全に消えていきます。
この時期の子どもは、環境の中で体験しながら、楽しんで自分を創って
いきます。
『子どもが敏感期の指示に従って行動できないとすれば、
何かを自然に獲得する機会は失われてしまいます。それも永遠に。』
【引用:幼児の秘密】
6.
モンテッソーリ教育の活動は『おしごと』と呼ばれます。
子どもは『真剣な遊び=自分を建設している』というモンテッソーリ教育の
考えによるものです。
モンテッソーリは、子どものそれぞれ違う発達のニーズに応えるための、
教具とその提供方法を生み出しました。
0−3歳頃までは、主に『運動』と『言語』において発達を援助し、
2歳半以降、徐々に『日常生活の練習』『感覚教育』『文化』『言語教育』
『数教育』へと活動が広がっていきます。
自分が選んだおしごとを、クラスの自分の好きな場所で、
時間をかけて手を動かしながら、探索します。
教具が発達に合っていれば、子どもは夢中になり集中します。
そして徐々にできることが増えて自立していくと、
自信や自己肯定感が育ち強い心が人格の基礎となっていきます。
7.
クラスは異年齢で構成され、子ども達の中で小さな社会を形成していきます。
子どもが自分でできる環境を整えることがとても重要で、年少児は年長児を
見て学んだり、子ども同士で助け合う姿が見られます。
モンテッソーリ教育では子どもの自己選択や自由を尊重しますが、その中で
いくつかの明確なルールがあります。
お互いにルールを守ることで社会性が自然と身についていきます。
そして、モンテッソーリ活動(おしごと)に集中した後、達成感と幸福感で
満たされた子どもは落ち着きを取り戻し、周りの人や環境に愛情を持ち、
自分も他者も環境も大切にする、調和のある心が育っていくのです。
8.
このように、自らを成長させながら『人間の建築』をしている子どもたち。
平和と調和のある心が育った子どもたちは、より良い未来を創ります。
戦後、モンテッソーリは平和運動にも力を注ぎ、ノーベル平和賞に
ノミネートされました。
『幼い子どもは、私たちの未来の希望である。』とはモンテッソーリの深く
永続する信念です。
【引用:ロンドン講義録】
まず自分自身をつくること。自分自身を大切にすること。そして誰かの役に
立ち社会の一員になること。環境と他者を愛すること。
モンテッソーリ教育で育まれた、やさしく強い心は、未来を創る希望と
なります。